私はビクトリノックスのアーミーナイフを、気付けば12年ほど手元に置いています。いわゆるスイスアーミーナイフ(マルチツール)と呼ばれる類のものです。とはいえ、最初から日常の主役だったわけではありません。
もともとはトレッキング用に「これ一本で何とかなる万能ナイフ」として買ったのですが、山での出番があるかというと、ほとんどなくお守り代わりのような存在になっていました。バックパックの奥に入れたまま、思い出すことすらない時期が何年もあったと思います。
それが数年前、ミニマリズムを意識し始めてから一気に立場が変わりました。今の私にとってのアーミーナイフは、非常時の装備ではなく、日常の道具箱そのものです。

使い始めたきっかけ
きっかけは「使わずに持っているのがもったいない」という感覚でした。使われずに眠っている道具が増えるほど、生活が重くなる。視界の隅で未使用の道具が未回収のまま残っている感覚になっていました。
道具箱の中には、ハサミやドライバー、ちょっとした刃物など、あったら便利なものが細々と入っていました。でも実際に必要になる場面は思っているほど多くありません。
そこで一度、生活側を道具に寄せてみようと思いました。道具を減らして、その制約の中で生活を整える。その実験をしてみるという発想です。
結果として、家の中の「道具箱」はこの一本に置き換わりました。ここから、この道具の人生が始まった気がしています。
使い始めて分かったこと
使い始めて分かったのは、意外とこれでほとんど困らないということでした。
主に使うのはナイフ2つ(大・小)、ハサミ、ドライバー。どれも専用品に比べればコンパクトで、正直なところ心もとない部分はあります。でも、日常生活で必要になる作業は、そもそも軽作業がほとんどです。例えば、「段ボールの開封」「荷物のタグを切る」「ゆるんだネジを締める」など。
面白いのは、道具が小さくなったことを意識すると、生活も自然に小さくなることです。例えば、しっかりした包丁がない前提なら、無理に切り刻む料理をしなくなる。カット済み野菜を使う、包丁がいらない食材を選ぶ。本格的に料理しに前提であれば、そういう選択が増えてきます。
道具が万能だから生活が広がるのではなく、道具の制約があるから生活が整う。この逆転の発想は、自分にとって発見でした。大げさですが、この一本があることで「十分な暮らしの最低ライン」が見えるようになりました。
ナイフの切れ味については、今のところ問題ありません。いずれ研ぎ直しをするタイミングが来るかもしれませんが、そこまで含めて長く付き合っていきたい道具です。
万人に勧めたい使い方ではありませんが、「道具を減らしたい」、「生活をコンパクトに整えたい」と思っている人にとっては、こういう極端な選択も一つの参考になるかもしれません。刃物なので取り扱いを慎重にしつつ、これからも道具として付き合っていきます。
1件のコメント