このブログを開設した3年ほど前、私はFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目標として強く意識していました。経済的に独立できれば、人生はもっと軽くなる。そんな期待がありました。
それから時間が経ち、いまは同じ言葉を少し違う温度で受け取っています。自分にとってFIREは答えではなく、問いの入口になりました。
成立しそうに見えても動けない感覚
生活費を資産の収益でまかなう——理屈の上では、まだまだですが、その射程が徐々に見え始めています。背景には、ミニマリズムの考え方を取り入れてから支出の構造が変わり、資産に投下できる資金が増えてきたことがあります。しかし、ここでいちばん厄介なのは計算ではなく心理です。
私は経済面について保守的です。たとえ成立しそうでも、「資産価値の変動」を受け止め続ける覚悟がないと、落ち着いて生きられない気がしています。つまり、資産価値の変動に注意を持っていかれます。
この状態はどこかで手当てしたいですが、人間の考え方の癖は簡単には変わらないので、私は癖を矯正するより、癖がある前提で設計する方が現実的だと考えています。
会社員として無視できない不確実性
会社員としての仕事は忙しく大変な面もありますが、いまは楽しくできています。できる限り続けたいです。
一方で、会社員である以上、会社組織の意思決定に左右されます。配置や評価、体制変更など、自分の判断だけでは動かせない変数がつきまといます。抜本的に環境を変えない限り、この構造から完全に自由にはなれません。
そして厄介なのは、ここでも注意が動くことです。人事を含む意思決定の行方に、一定の注意を割かざるを得ません。これは現実的な社会人としての制約事項です。
このことから、仕事は続けたい。でも、会社に依存し切るのは怖いです。この中間にいる感覚が落ち着きません。
「お金<時間」に移行しつつある
人生のあるタイミングから、私は「経済的に恵まれること」よりも「精神的に恵まれること」を意識するようになりました。おそらく、少しずつ経済的に潤い始めたからこそ、そうした視点を持てるようになったのだと思います。
最近は、頭の中で「お金<時間」という不等式が成立し始めています。
ただ、完全に割り切れていません。時間を重視したい一方で、経済合理性も無視できません。この二つの間で判断を先送りにすると、何も選ばないまま時間だけが過ぎていきます。
それは、私にとって満足度の低い状態です。だからこそ、この違和感をそのままにせず、いったん言葉にして整理しています。
FIより自由に関心が向いている
FIはFinancial Independence、経済的独立を意味します。ただ、最近の私の関心は、FIそのものよりも「自由」という状態に向いています。
この自由は、辞書的な定義ではなく、私の主観を含んだものです。私の定義では、自由とは「経済的な基盤を土台として、最終的に自分の注意をどこに投下するかを選択できる状態」です。
投下先は生産的である必要はありません。どれだけ非生産的に見えることでも、意図的に選んでいるなら、それは自由だと思い始めています。
逆に言えば、資産があっても時間があっても、注意がノイズに吸われ続けているなら、それは自由ではありません。
FIREは注意の主権の下部構造
私にとってFIREは、ゴールではありません。自由(=注意の投下先を選べる状態)を成立させるための、下部構造に近いです。ここで言う下部構造とは、思想や価値観そのものではなく、それを現実の生活の中で成り立たせるための土台(インフラ)という意味です。
生活費の不安が小さくなること、選択肢が増えること、外部の都合に振り回されにくくなること。そうした条件が揃って初めて、注意の向け先を自分で選びやすくなります。
また、「注意の主権」とは、簡単に言えば、自分の注意をどこに向けるかを自分で決められている状態のことです。たとえば、気づくと不安や比較、会社の意思決定や市場の値動きに注意を吸われてしまう——そうではなく、意図して「今日はこれに集中する」と選べている状態を指しています。
だから私は「早く辞めたい」とは言い切れません。ただ、いつでも選べる状態でいたいです。それが、いまの私にとっての安心であり、主権なのだと思います。
おわりに
この文章に結論はありません。40代のいま、価値観が少しずつ変わってきています。その途中経過を、いまの言葉で残しておきたかった。
もし同じように、FIREにも会社にも振り切れず落ち着かない人がいるなら、その状態は不自然ではありません。むしろ、今の自分に真面目に向き合っている証拠です。
私はいまのところ、どちらかに振り切る結論よりも、まずは「注意の主権を守れる状態」を優先して設計していこうと思っています。
この先、物事に対する位置づけは更新されると思います。だから、これは暫定版としてここに残しました。
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